9.遺産分割協議
●相続税の申告期限(10か月後)に間に合うように進めましょう。
●分割方法が決まったら遺産分割協議書を作成する。
●話がまとまらなければ調停や審判で決めます。
(1)遺産分割と遺産分割協議
相続人が確定し、財産調査が終わったら、遺産の分け方を決めなければなりません。
これを遺産分割といいます。
遺産分割についての話し合いを遺産分割協議といいます。
遺言がなく、相続人が2人以上いる場合は、必ずこの協議が必要です。
法定相続分通りに分ける場合でも、どの財産を誰が引き継ぐかを具体的に決める必要があります。
これを「協議による分割」といいます。
一方、
遺言がある場合は、原則として遺言の内容に従って遺産分割が行われます。
これを「遺言による指定分割」といいます。
しかし、「長男に1/2、次男に1/2」というように、相続割合の指定のみの場合や、
一部の財産についてのみ指定している場合は、遺産分割協議が必要です。
これらの場合、誰が何を相続するかまでは決められていないからです。
また、すべての財産についても、詳細な子弟がある遺言でも、相続人全員の合意があれば、遺言と異なる遺産分割が可能です。
ただし、遺言執行者の承諾は必要です。
(2)遺産分割協議の期限と成立
遺産分割協議そのものは、特に期限はありません。
ただ、相続税の申告の際に、協議に基づいた遺産分割協議書が必要になりますので、課税対象者は申告期限(相続開始から10か月以内)に間に合うよう早めに進めましょう。
また、遺産分割協議書の成立には、相続人全員の合意が必要です。
1人でも欠けていれば無効になります。
さらに、協議がいったん成立したら、その内容を一方的に取り消したり、変更したりすることはできません。
協議はスピーディーに行う必要がありますが、後悔のないように納得いくまで全員で十分に話し合うことが大切です。
なお、協議の際は、必ずしも相続人全員が1か所に集まる必要はありません。
遠方に住んでいる相続人がいる場合は、電話などで連絡を取り合って進めていくことになります。
(3)遺産分割協議書の作成
協議か成立したら、合意内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
協議書の作成は、法律によって義務付けられているわけではありません。
たとえ作成しなかったとしても、合意した内容は無効になりません。
しかし、協議内容をめぐって対立が起きた場合、協議書があれば証拠となりますので、無用な争いを未然に防ぐことができます。
また、遺産分割協議書は、相続税の申告だけでなく、銀行預金の名義変更や相続登記の際にも必要になります。
書き方のルールは特にありません。
大切なことは、誰がどの財産を取得するのかを、もれなく明確に記載することです。
そして、作成した書面にすべての相続人が目を通し納得したら、相続人全員が署名・押印します。
相続登記などでこの協議書を提出する場合、一緒に印鑑証明の提出を求められますので、実印で押印されることをおすすめします。
書類は相続人の人数分作成して、それぞれが保管します。
(4)協議がうまくいかない場合
何度話し合いをしても、分割方法が決まらない場合は、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
この方法を「調停による分割」といいます。
調停を希望する場合、相続人のうち1人または数人が、他の相続人に対して申し立てをします。
調停では、家事審判官と調停委員の仲介のもと、相続人同士の話し合いによって解決することを目指します。
ここで合意が得られたら、調停調書が作成されます。
この調停調書は、遺産分割協議書の代わりになります。
特に名義変更の際に必要になります。
調停でもうまくいかない場合、自動的に審判に移行します。
これを「審判による分割」といいます。
審判では、財産の種類や相続人の年齢、生活状況などを踏まえて、最終的に家事審判官が分割方法の決定を下します。
そして、遺産分割協議書の代わりになる審判書を出します。
この審判書には、法的効力があります。
そのため、相続人同士の合意がない場合でも、この審判書に従わなければなりません。