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4.遺言の基本
●遺言は法定相続より優先されます
●不公平な内容の遺言になってしまう場合は付言事項で理由を伝えます
(1)法的効力が遺言事項にはある
遺言に書くことによって、法的効力が生じる内容のことを遺言事項といいます。
遺言事項は法律で定められています。
相続の法定事項の修正に関する事項や、財産処分に関する事項などがあります。
具体的には、相続分の指定や遺産分割方法の指定、遺贈に関することなどです。
他にも遺言に記載すると法的効力を持つ事項は様々あります。
反対に、例えば「長男は妻と同居すること」、「骨は散骨してほしい」などは遺言事項に該当しません。
ただ、遺言に書くこと自体は自由となっています。
それらの内容に法的効力はありませんが、相続人が意思を汲んで実行してくれる可能性はあります。
(2)遺言を残してトラブルのない相続を
遺言は、財産内容の処分などについて、遺言者の希望を実現させるためのものです。
そして、残された家族のトラブル(争族)を防ぐ目的もあります。
相続財産を「誰に」、「どのように残すか」を、遺言者があらかじめ決めておくことによって、相続人間の争いを防ぎます。
例えば、子供のいない夫婦で夫が亡くなった場合、すべての財産が妻のものになるのではなく、被相続人の親または兄弟姉妹にも相続する権利が生じます。
しかし、この場合で「配偶者にすべての財産を相続させる」という遺言があれば、相続財産のすべてが配偶者のものになります(親が相続人の場合は親に遺留分の権利あり)。
他にも遺言が必要なケースを下記に挙げますので、掲載していないケースでも、少しでもトラブルの心配がありましたら、遺言を作成されることをおすすめします。
また、遺言の内容は、相続人間に不公平を生むこともあります。
その場合は、そのような財産の分け方にした理由を付言事項という形で遺言書に書き添えるとよいでしょう。
しかし、付言事項に法的効力はありません。
ただ、遺言者がなぜこのような分け方にしようと考えたのかがわかると、財産を引き継ぐ側も冷静に受け止めやすくなります。
付言事項を書くことですべての相続トラブルが防げるわけではありませんが、一定の効果はあるでしょう。
(3)遺言で法的効力が生じる内容(遺言事項)
●相続分の指定
→法定相続分と異なる指定ができます。
●遺産分割方法の指定
→誰に何を相続させるかなど具体的に指定できます。
●第三者への遺贈
→相続人以外の人に財産を遺贈できます。
(4)その他の遺言事項
《相続や財産の処分に関すること》
特別受益の持戻しの免除 ; 生前贈与を相続分に反映させない旨の意思表示ができます
遺留分減殺方法の指定
法定相続人の排除またはその取消
特定団体への寄付
遺産分割の禁止 死後5年以内の期間で遺産の分割を禁止できます
共同相続人間の担保責任の指定
信託の設定 信託銀行などに信託を依頼できます
《身分に関することなど》
子供の認知 子供の認知を行うことができます
未成年後見人または後見監督人の指定
遺言執行者の指定
祭祀継承者の指定
墓や仏壇などの承継者を指定できます
生命保険金の受取人の変更
(5)効果的な遺言を作成するためのポイント
①相続財産と相続人をきちんと調べる
財産の一部についてだけ遺言することもできますが、中途半端な遺言はトラブルの元になります。
財産をしっかり調べ、相続人が混乱しない遺言にしましょう。
②遺留分に配慮慮して遺言の内容を決める
相続人には、最低限これだけはもらえるという遺留分があります。
特定の相続人の遺留分を侵害する相続分の指定は、トラブルの元になりますので、十分配慮しましょう。
③誰に何を渡すか具体的に指定する
「Aに株券3,000株を」など、具体的に指定するほうが、遺産分割がスムーズになります。
「財産の○分の1」という相続割合の指定ですと、誰が何をもらうか話し合いで決めないといけなくなります。
④遺言執行者を指定する
遺言を確実に実現するには、遺言執行者を指定されることをおすすめします。
誰を指定するかは、遺言にも書いておきましょう。
⑤決められた様式で不備のないように作成
遺言は、法律で定められたルールにのっとって書きましょう。
不備がありますと、無効になりますのでご注意ください。
⑥不公平な内容になるときは理由を添える
法的効力はありませんが、被相続人の思いを遺言に書くこともできます(付言事項)。
特に不公平な内容にある場合は、付言事項に思いを記すことで、無用なトラブルを避けられることもあります。
(6)遺言を作成してほしいおすすめのケース
①自宅以外の財産がほとんどない
現金のように簡単に分けることができないため、もめやすい傾向にあります。
→誰が不動産を相続するか、あるいは処分してほしいか、遺言に記載します。
②特定の子どもに財産を多く残したい
遺言がないと、子ども同士はみな同じ相続分になります。
→遺言で誰に何を渡すかを指定します。理由を遺言に添えて、思いを理解してもらいます。
③相続人が多い
人数が多いほど、遺産分割でもめやすい傾向にあります。
→誰に何を渡すか遺言で具体的に指定するようにします。
④配偶者はいるが、子どもはいない
配偶者と被相続人の父母または兄弟姉妹が相続人になるため、財産のすべてを配偶者に残せません。
→配偶者に全額を渡したい場合は、遺言にその旨を明記します。
⑤事実婚による配偶者がいる
長年生活を共にしていても、相続人ではありませんので財産を引き継げません。
→財産を残すためには籍を入れるか、遺言で遺贈します。
⑥再婚した配偶者に連れ子がいる
配偶者の連れ子は養子縁組をしない限り、相続人になれません。
→財産を遺言で遺贈するか、養子縁組をします。
⑦元配偶者にも現在の配偶者にも子どもがいる
それぞれ法定相続分は同じですが、一方が納得しないことがあります。
→法定相続分通りに分けるとしても、遺言を作成して相続人の思いを添えます。
⑧子どもの妻に介護してもらっている
子供の妻は相続人ではないため、財産をもらえません。
→財産を遺言で遺贈します。
⑨生前に多額の援助をしている子どもがいる(特別受益)
特別受益の持戻しの制度がありますが、相続人同士の話し合いでは、わだかまりが残ります。
→特別受益分を考慮した遺言を作成します。
⑩かわいがっているペットがいる
自分の死後、ペットが十分な世話を受けられない可能性があります。
→遺言により、ペットを世話する代わりに財産を渡すという負担付遺贈を行います。
⑪事業を継ぐ子どもに、財産の大部分を渡したい
事業に必要な財産が他の相続人に分散すると、後継者が事業を続けられなくなることもあり得ます。
→事業の承継者に何を渡すかを遺言で具体的に指定します。
⑫暴力をふるう子どもに財産を渡したくない
他の相続人と同じような財産を相続することになります。
→条件は厳しいですが、遺言により相続人の権利を奪えることがあります
(相続人の廃除)。
相続財産を計算するためには、土地や家屋などの不動産、現預金、株式などの有価証券、貸付金、(被相続人が個人事業主なら)事業にかかわる売掛金、などといった「プラスの財産」から、
住宅ローンやその他の借入金、固定資産税の未払い分などといった債務、すなわち、「マイナスの財産」まで、漏れのないように調べなければなりません。
これらの財産調査を行なった結果を「相続財産目録」として作成し、次のステップである遺産分割協議を行なうにあたっての重要な基本資料として活用することになります。
相続財産の中でも一般的に大きな比重を占める不動産(土地・建物など)についてみていきます。
不動産を確定(把握)するために、効率のよい方法は、次のとおりです。
市役所で故人の名寄帳を取り、それをもとに、被相続人名義の固定資産評価証明書を交付してもらう。(相続が開始した日の属する年度のもの。)
法務局に行って、1.で取得した証明書に記載されている不動産について登記簿謄本(全部事項証明書)を請求する。
同じく法務局で、固定資産評価証明書に記載されている所在地の土地の公図を請求する。
できれば、住宅地図などで、公図上の土地が住宅地図上でどこに位置するのか、マーカーなどでわかるようにしておく。
その土地や家屋が他人に貸しているものである場合には、その賃貸契約書を探し出しておく。
現金預金、借入金などは、預貯金の通帳や当該金融機関に発行してもらう残高証明書で確認します。
残高証明書は、相続開始日現在の日付で請求します。
残高証明書には、預貯金のみならず、借入金の残高も載っているはずですから、被相続人に借金があったかどうかの確認は、これにより可能となります。
株式については、株券の確認と、保管先の証券会社に照会します。
最近増えている「株券不発行会社」については、株式発行元の株式会社から、株主名簿記載事項証明書を発行してもらうようにします。
上場株式については、株式取引価格が公開されていますから、それに基づき株式の評価額を相続財産目録に記載します。
自動車については、車検証を、貴金属や宝石などの動産については、その目録を準備します。
また、中古車販売店で、下取り価格を査定してもらうなどして、相続財産目録に評価額を記載します。
相続財産調査はなぜ必要なのか・・・?
一つは、相続税の申告の要否、あるいは相続税の納付額を明らかにするために、相続財産目録を作成すことが大変役立ちます。
また、相続税の申告が必要となった場合、相続税の申告書には、必ず相続財産の一覧表を作成する項目があり、これを作成必要があるのですが、きちんとした相続財産目録を作成しておけば、申告書の様式に相続財産目録をもとに転記するだけで済むことから、相続税申告書作成の手間が大幅に軽減できるメリットがあります。
もう一つの理由は、円満な遺産分割を実現するために必要不可欠、ということです。
遺産分割協議の際に、相続財産全体の内容が一目でわかる相続財産目録を作成し、当事者全員に配布することで、
続人間の話し合いがスムーズに進み、結果として遺産分割協議が円満にまとまりやすい、という大きなメリットがあります。
相続手続きの場面でトラブルになる原因の一つに、相続人全員に遺産全体の内容が伝わっていない、ということがあります。
遺産分割協議では、立場の異なる相続人同士が遺産分割の話し合いをすることになるのですが
、まず注意すべきことは、故人の財産を実質的に管理していた相続人と、その他の相続人との間には、決定的な情報量の差が存在することを意識しておく必要があります。
また、他の相続人は、たとえ口に出すことはなくても、相続財産がどれくらいか、その財産内容について、ほぼ例外なく知りたいと思っています。
この点を意識していないと、遺産分割協議の場において、故人の財産を実質的に管理していた相続人は、財産状況を口頭での説明にとどめたり、
場合によっては財産状況の説明すら省略してしまったりします。
故人の財産をその相続人が私的に使い込んでいるのではないか、といった疑念まで生じさせてしまう心理状態に陥ってしまいます。
こうなってしまうと、後から相続財産目録を出しても、既に生じてしまった疑念を払拭することは、感情的な面からも非常に難しく、
結果的に遺産分割協議がなかなかまとまらず、最悪の場合、家庭裁判所の調停や審判でないと解決ができないほど、こじれる場合もあります。
そこで、あらかじめ相続財産目録を作成し、遺産分割協議の冒頭に相続人全員に提示することが、
相続トラブルを予防する最善策であることを知っておいてほしいと思います。
相続手続の経験豊富なスタッフが最適な支援をさせていただきます。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問合せくださいませ。
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